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歯科検診をして気がついたこと

はじめに

先日、歯科検診のために医院を休診していました。ご迷惑をおかけした方申し訳ございません。

僕はボランティアで幼稚園と障がい者施設の歯科検診を行っている。今回は幼稚園で気がついたことを話をしていこうと思う。今年入園してきた子はコロナ禍で生まれた子どもたちなのだ。そこで昨今あった傾向がより強化された印象がある。

子どもの傾向

最近は虫歯のある子どもは圧倒的に減った。これは文句なくいいことだろう。昨今の親御さんの知識が増えたのだろうと思う。

僕が思う特徴は大きく2点

・ディープバイトの子どもが多い

・上口唇(じょうこうしん、うわくちびるのことです)が上がらない子どもが多い

だ。おそらく同じ原因があって結果そうなっていると思っているのだが、一つずつ説明していこうと思う。

ディープバイトとは

日本語で過蓋咬合といい、わかりやすくいうとイーッとした時に上の前歯が被り過ぎて下の前歯が見えないような状態だ。幼稚園の歯科検診なので、6歳ぐらいまで見ているわけだが、ディープバイトの子どものほとんど(体感で80-90%ぐらい)が幼稚園の数年で改善されず、そのまま6歳になる。そしてディープバイトの子どもはほぼ全て永久歯に生え変わる時に生え変わりのスペースが足りない。

つまり3歳ぐらいまでである程度歯並びの運命が決まっていると言っていいのではないかと思う。ある本によると、6−7歳でほぼ歯並びが決まると書いているものがある。これはある先生が何十年にも渡って小学校の歯科検診の度に写真をとり、6年間の変化を追い続けた結果導き出したものなので、間違いない。僕もそうしたいのだが、現代のルールで全ての子どもの口元だけで本人の特定は難しいが撮り続けるというのは不可能だろう。

ただ、6−7歳までなると矯正力が必要になるのだが、3−6歳であれば、生活環境を変えることである程度は改善できないかと考えている。そのために必要なのは原因の追求だ。

ディープバイトの原因とは一体なんなのだろうか。もう一つの問題点とリンクするので、まずはもう一つの問題点に向かおうと思う。

上口唇が上がらない

僕は歯科検診の時に子どもにイーッといつもさせている。その時に上の歯が見えない子どもが増えたのだ。本来幼稚園に行っている世代の子どもであれば歯肉(歯茎)までしっかり見えていることが多い。しかしこの10年で見えない傾向は増えたと思うし、コロナ渦以降より加速したように思っている。

みなさんは上口唇は動きますでしょうか?多分このブログを読める環境にいるひとのほとんどが動くと思うし、前歯の半分ぐらいは最低でも見えていると思う。大人になってあまりに上口唇が上がり過ぎるとガムフェイス(Gum face)とかガミーフェイスと言われる上顎の歯肉が多く見えるような顔つきになってしまう。ちなみに僕は上顎の歯肉がしっかり見えるタイプの顔つきをしている。

ヒトの成長因子と共通点

両方の共通点は

上顎の前歯部のあたりが下方向に伸びている

ということだ。これを理解するにはヒトの成長について知らないといけない。ヒトの成長は遺伝によって決定される部分が非常に多い。しかし、環境要因も軽視してはいけない。特に肉体の成長方向については環境要因が大いに関係する。つまり何が言いたいのかというと姿勢やバランスが悪いと姿勢やバランスがが悪いなりに成長する。上顎の前歯部は成長過程において上前方に成長してほしいのだが、その刺激が足りないまま成長した結果上顎の前方が下に降りてきてしまっているのだ。

ディープバイトの原因

では、上顎の前歯部が降りてきている原因はなんなのかというとこれは『舌の位置』だと考えている。皆さんは正しい舌の位置をご存知だろうか。例えば今、舌はどこにあるだろう。上顎に収まっていたら正解だ。上顎に触れず、下の顎の中にあるとそれは位置が低いということになる。

詳しくは『歯並びを綺麗に並べるには』という別のブログ記事を読んでいただいて、生まれてからこれを覚えるのは授乳期ということになる。

そして、上口唇の使い方を学ぶのは授乳期からもあるのだが、離乳期もまた重要になってくる。この時にスプーンで離乳食を食べるのだが、スプーンの離乳食を赤ちゃん自身に取りに来させなければならない。スプーンの上の食事を歯がないので上口唇を使ってとるようにして、上口唇の使い方を覚えるのだ。時間がない親御さんで、離乳食を赤ちゃんの口の中に親御さんが入れてしまっていたりとかすると、上口唇の使い方を学ぶタイミングを逃すということになる。

上口唇を使わず、上口唇の上げ方がわからないまま育った結果、上口唇の上がらない子どもが育ったのだ。

そして、よく考えてほしい。上口唇が上がらずにずっとぶら下がっているのだ。上顎前歯部が下がってもおかしくないだろう。さっきも言ったように成長方向は環境要因が大きい。ずっと前に何かがぶら下がっているなら下方向に成長が向くのもまた必然だろう。

改善するには

僕はこの授乳期や離乳期に原因があるという説を推している。ただ、これはいろんなデータとか情報を逆算しているだけで科学的根拠のある話ではないので、一個人の歯科医師がそう言っているんだなという程度に思っておいてほしい。今回の話の中で科学的根拠があるのは、6−7歳になってスペースが足りないなどのトラブルがあると矯正力がないと歯を並べるのは難しいという点と、成長方向は環境要因が大きいというところだ。

ただ、僕が感じたように3歳までにディープバイトになっている。ほとんどの子どもは6歳までに改善しない。ディープバイトの子どもは基本的に歯が生えるスペースが足りないとなると、授乳期や離乳期に問題があるというのはスジが通ると思っている。

ただ、6-7歳と違って3-6歳であれば、矯正力がなくても改善する見込みがあると考えている。あくまで僕が個人的に思っているだけなのだが、その話をしていこう。

具体的な方法

まず、下を上顎につけるということ、上口唇を上げるようにすることなどを覚えなくてはいけない。単純にやり直せばいいのだ。上顎に舌を収めて嚥下をする、上口唇に関してはスプーンでの食事の時に上口唇を使うように意識する、上口唇をマッサージする(単純にモミモミするだけでもいいと思います)、あいうべ体操をするなどがいいと思う。

あとは姿勢を良くするということが非常に大事だ。上顎に舌を収めると繰り返し言っているが、これは口周りの姿勢を良くしようという話になる。口周りというミクロの細かい部分の姿勢も大事だし、マクロで全体の姿勢もバランスが取れていなければならない。単純に立っている姿勢、座っている姿勢なども大事だということだ。

子どもの姿勢を良くするのに必要なこと、それは

親自身が姿勢を良くすること

だ。子どもは親の姿勢と似ていることが本当に多い。親自身が猫背なのに子どもに「背筋を伸ばせ」と言っても子どもも納得できないだろう。正しい姿勢を親が理解するというのが非常に大事なポイントになるのだ。

おわりに

僕は歯並びが悪くなることは異常なことだと考えている。歯並びは綺麗に並んで普通なのだ。普通の動物であれば歯並びが悪いは死にいたることもある重大な事態だ。しかし、最近の子どもは半分以上に歯科矯正が必要だと言われている。つまり、歯並びが悪いことが普通になってきているのだ。

確かに体感的にも矯正力が必要だなという子どもは多い。6-7歳ぐらいになってもスペースが足りないとなると歯科矯正は必要だろう。それに異論はない。しかし、僕はヒトという動物の復元力を期待している。0-2歳ぐらいの授乳期から離乳期、このあたりで歯並びの運命は左右される。しっかりステップを上がっていれば問題ないが、現代社会ではそうでないことも多い。しかし、もしその時期にうまくいっていなくても3-6歳ぐらいの時期であれば矯正力なしにリカバリーできるのでは?と考えている。

子どもの歯並びは親御さんが悪いとかそういうことではない。社会が悪くてそういうことが起きていると考えている。