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日本人がノーベル生理学・医学賞を受賞🏅

はじめに

日本人がノーベル生理学・医学賞を受賞しました。坂口志文先生です。
せっかくなので、どのような経歴でどのような研究をしておられたか調べてみました。

ショート動画とYouTube動画を作ってみたので、そちらもご覧いただきたい。(鋭意製作中。あとでリンクをつけます。)

坂口志文先生の経歴

滋賀県出身、京都大学医学部卒業で医師に。その後研究の道に進まれたようで、京都大学の医学研究科を中退し、愛知県のがんセンターの研究生になる。その後京都大学の大学院を卒業し、医学博士に。この博士論文も胸腺を取ったマウスの自己免疫疾患(自己免疫性卵巣炎)についての論文だったようです。今回、ノーベル医学生理学賞受賞に至った研究も免疫に関するもので、この胸腺は非常に重要なポイントになります。その後、ジョージホプキンス大学や、スタンフォード大学の研究員を歴任し、カリフォルニア大学の助教授などを経て、大阪大学や京都大学の名誉教授になられているということです。その間もめちゃくちゃ色々歴任しておられますが書ききれません。Wikipediaを参照

まぁとにかくすごい人で、免疫研究をメインにされていたというところでしょうか。

ノーベル生理学・医学賞受賞に至る研究

日本語に訳すと

「IL-2受容体α鎖(CD25)を発現する活性化T細胞によって維持される免疫学的自己寛容。自己寛容の単一の機構の破綻が、さまざまな自己免疫疾患を引き起こす。」

といった感じでしょうか。

原著論文はこちら。(英題も入れたかったのですが、このブログだと長い英文を書くとエラーが出る。すみません。)

僕がみたところこのCD25というタンパク質を持っていると免疫寛容が起きて、これがないと自己免疫疾患が発生しちゃうよと言ったところだろうか。この理解には少し前提知識が必要だ。

免疫とは

みなさんは免疫とはどのようなイメージをお持ちだろうか。外からバイ菌とかウイルスが来たら戦ってくれるシステムといったところだろうか。おおよそそれで正解だ。

厳密にいうと「自己と非自己を分けて非自己を攻撃するシステム」としていいだろう。自己は自分で非自己は自分以外だ。

しかし、時に自己も攻撃しなければならない時がある。例えば、ウイルスに感染した自分の細胞や、「がん細胞」になってしまった自分の細胞だ。ウイルスに感染してしまった自分の細胞はご理解いただけると思うが「がん細胞」は難しいかもしれない。

「がん細胞」と「がん」という病気の関係

ここで整理して考えないといけないのは、「がん細胞」は毎日数百個ぐらいできていると言われて「がん」という病気とは別物ということだ。人間は毎日何億という細胞が分裂している。そうするとたまにうまく分裂できない奴が生まれることがある。いろんな種類のイレギュラーがあるのだが、その中に「周りのことを気にせず細胞分裂しまくるぜ」っていうイレギュラーがある。これが「がん細胞」だ。イレギュラーがあると今後どんなトラブルになるかわからないので、自分の細胞なのだが、免疫が攻撃し、殺してしまう。そして普通の状態がキープされるのだが、たまに「がん細胞」がその免疫をすり抜けて、周りの組織や臓器に影響を与えるほど大きくなることがある。それが「がん」という病気だ。

つまり、「がん」という病気まで至った「がん細胞」は自分に向く免疫の働きを抑制していると言えるのだ。

自己免疫疾患

自己免疫疾患は文字通り自分の免疫が自分の細胞を攻撃してしまう病気のことを言う。最初に免疫の説明をしたように自己と非自己の見分けがついていない病気と言える。

関節を攻撃するようになればリウマチというし、腺細胞を攻撃するようになればシェーグレン症候群というようになる。基本的に自己免疫疾患を一つ持っていると、他の自己免疫疾患も併発しやすいと言われている。

自己免疫疾患は自己と非自己の見分けがついていない、もしくはつきにくい病気といえ、免疫が過剰に働いている状態と言えるのだ。

バランスが大事

免疫は働かなくてもダメ出し、働き過ぎてもダメで、バランスが大事なのだ。このCD25は免疫のアクセルにもブレーキにもなる存在なのだ。

研究内容

そして、前振りが長くなったが坂口志文先生の研究が、このCD25が活性化しているT細胞(免疫細胞)があると、免疫の力が抑えられて、これがないと免疫細胞が自己非自己関係なく攻撃して自己免疫疾患になるという研究だ。

その後、研究が進み、CD4とCD25とFoxp3があると免疫寛容(免疫が攻撃しない)が起きることがわかっている。この時発言するT細胞を制御性T細胞(Treg:ティーレグ)と言われている。

つまり、「がん」にはTregがいっぱいあって、自己免疫疾患にはTregが少ないということなのだ。

この機構がわかると今度は薬を作れる可能性が出てくる。実際2018年にノーベル生理学・医学賞を受賞した本庶佑先生の研究はニボルバブという薬となって多くの患者さんを救っている。今回の研究内容であれば、「がん」にはTregの数を減らして、自己免疫疾患にはTregの数を増やせばいいということになる。

もちろんそんな簡単なことではないが、人類が多くの病気を克服する可能性のある研究であることは間違いない。

おわりに

昨今、研究にお金をかけるのは意味がないや、そんなことにお金をかけている場合ではないという論調がある。確かに経済政策などにお金をかけることは大事だと思う。しかし、日本ほど研究員の地位が低い国はない。科学の研究は未来なのだ。科学だけは一歩一歩前に進んで未来を明るく照らすのだ。

僕は博士を取る時に少し基礎系の研究をしていた。僕の能力ではとてもとてもできたものではなかった。まず基本の頭が足りない。そして、自分を信じて突き進む勇気。能力も精神力も僕にはなかった。

坂口志文先生は一度は否定された免疫を抑える細胞が存在するということを証明した。30年前は否定された内容で、誰も存在を信じなかったそうだ。それをご夫婦で研究され、存在を証明した。それは本当に偉大なことであり素晴らしい功績だ。

この研究にお金をかけていない日本で2,30年後はノーベル生理学・医学賞を受賞する日本人は生まれるのだろうか?