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日だまりショットの話を少ししよう
はじめに
正直触れるかどうか悩んだのだが、科学的根拠を大事にしている身として触れていくことにした。
日だまりショットとは、日比大介さんという方が考案した頭痛をとるマッサージだそうだ。
とある番組で日比さんが出資をお願いするみたいな番組に出たようで、そこに出資者側にいる医師にめちゃくちゃキレられて大炎上し、ショートの動画が回っているということだそうだ。
日だまりショットの何が問題か?
この日比さんの解剖学的知識が乏しいことと、科学的根拠の意味がわかっていないことだ。要するにやってみたら良かったというだけのことなのだ。それはただの経験値であり、民間療法も民間療法で正直ほぼほぼ意味ないと言っていい。おばあちゃんが孫に肩たたきをしてもらって「あぁ楽になったよ」というレベルの話なのだ。
解剖学的知識が乏しい
これの根拠はこの記事を書くに当たって一応調べようと他の動画を見たりしたのだが、日比さんが答えられていなかったり、自分の感覚で実際の解剖とは違う話をしたりしていたのだ。正直、ちゃんと勉強したことがないのかな?レベルだ。
科学的根拠
これは番組でも批判されていたのだが、自分の手技が正しい根拠としてもってきたのが、1000人だったかな?頭痛が良くなりましたという患者のアンケートだ。これを自分の手技が正しい根拠としたのだ。まずこれは科学的根拠にはならない。こんなものを論文で出そうものなら査読もろくになくリジェクトされてしまうだろう。
科学的根拠になる情報というのは、今回でいうと同じ診断や症状のひとを無作為に100人連れてきて、2群に分け、それをさらに2群に分け何もしない群、薬の治療だけをする群、日だまりショットをする群、薬と日だまりショットをする群にわけ、結果を集計し、統計学的処理をし、有意差が出たらこれは科学的根拠のある治療だとなる。(あくまで簡単に説明しているが、実際はもっと厳しい)
結果が良かったアンケートを何万持ってきてもそれは根拠にならないのだ。それをわかっていない。
なぜ医師は民間療法を嫌うのか
医師は極端に民間療法を嫌う。それはなぜかというと、民間療法に傾倒したことによって助けられるタイミングを逃したり、悪化したりしたひとを散々見てきているからだ。
これはよくがん治療で起きるのだが、標準治療と言われる一般的な治療をしましょうとなった時にどこからか「抗がん剤は毒だ」とか、「薬を飲んでも良くならない」という民間療法をしているひとからの洗脳にあい、標準治療をやめて民間療法に走るひとがいる。まだこの時なら標準治療で助かる可能性があるのにだ。
そして民間療法にバカ高いお金を出して数ヶ月とか経つ。もちろん良くならない。そしてその頃に何かおかしいのではと思い病院に帰ってきて「やっぱり治療してくれ」と言い出し、「手遅れです」ということがある。
その時に患者は医師に文句を言うのだ。「あんなに高い金を払ったのに!」、「なぜもっと止めてくれなかったんだ!」、「治療できると言ったじゃないか!」など。民間療法での失敗を医師にあたってきたりするのだ。訪問診療やターミナルケアに関わったことのある医師や看護師は少なからずこの経験があるはずだ。
患者本人の判断ミスなのだが、その八つ当たりを受ける先が医師や看護師なのだ。民間療法をしている側はターミナルをみない。要するに自分のところで悪くなったひとは死ぬだけなので、その後何もしないのだ。だから、自分のところで良くなったという。患者が亡くなることによってクレームが来ないからだ。医療批判だけして良くも悪くもならんものを出し、患者をギリギリまで弱らしてお金さえ巻き上げてしまえばあとは被害者はいなくなるというシステムをとっている。
民間療法を僕は情弱ビジネスだと思っている。みなさんよく考えてほしい。保険診療での儲けと民間療法の儲けどちらの方が大きいかを。確実に民間療法を推して医療の闇とか言って陰謀論を唱えている方が儲かる。科学的根拠のない適当なことを言えるのだ。僕は思う。こういった面で医師は占い師に勝てない。
歯科業界では「フッ素は毒」といっているひとが裏では「フッ素が効くのはわかってる。ただそういった方が自費でお金がもらえるからそう言っている。ファッション反フッ素だ。」と言っているひとがいるということが少し話題になっていた。つまりそういうことなのだ。
頭痛はマッサージで治るのか?
これは実際治るものもある。日だまりショットは第二頚椎のあたりを軽くマッサージするそうなのだが、これには実は可能性がある。頭痛の中でも筋緊張型頭痛というものがあるのだが、これに関しては首や頭皮のマッサージをすると改善するという論文がある。筋緊張型頭痛は姿勢の悪いひとがバランスをとるために無意識に緊張させてそれが痛みを引き起こすのだが、この緊張をとってあげるよ頭痛が良くなるのだ。至極当たり前だ。
しかしこれは首や頭皮のあたりを揉めばいい。つまり独自の技術もクソもないのだ。
このタイプの頭痛なら薬も効きにくいし、日だまりショットが効果あると思うのもわからいではない。こういった説明ならまだ納得がいく。
しかし、これも日比さんが良くない点なのだが、頭痛にはめちゃくちゃ種類がある。国際頭痛分類 第3版によると大きく三つに分かれており、一次性頭痛、二次性頭痛、神経性頭痛だ。そこからさらに200種類以上分かれているのだ。どの頭痛に効いて、どの頭痛に効かないかは明確化しておくべきだ。
例えば、クモ膜下出血による頭痛にこのマッサージは効くわけがない。
これらの知識がないのに頭痛の専門家面するのはいかがなものだろうか。
僕は実績があっても言わない
例えば、僕でいうと歯科医師なので、咬み合わせを調整するのだが、肩こりが取れたというひとなど今までいくらもいた。しかし、僕は歯科医師なので「肩こりがよくなります」とか「肩こりにいい」とかは言わないようにしている。他にも上顎の親知らずが頬側に出ているひととかであれば、抜歯することによって緊張が取れて肩こりとか首が楽になったというひとがいたが、それも「上顎の親知らずを抜くと肩こりとか首のこりが良くなります」とは言わない。
これはそういうことがあるという自分の経験談であり、論文レベルで証明されていない以上言ってはいけなし、歯科という分野の範囲からも逸脱しているので、「肩こりが良くなる」とか「首のこりがよくなる」とは言わない。
これが医療と民間療法の差なのだ。
僕は歯並びや歯科における姿勢の重要性を説いていたのだが、あくまで個人的にそう考えているという表現にとどめていた。しかし、最近やっと姿勢と歯並びに関する論文や、歯科矯正をするときに姿勢矯正や扁平足の矯正を行うと結果がいいという論文が出てきた。それもこの1、2年のことだ。
やっと僕は自分の考えを言えるようになったと言える。
おわりに
もちろん科学は進歩していて今、当たり前のことが否定されたりひっくり返ることはある。歯並びと姿勢のように今でこそ科学的に証明されたが数年前では証明されていなかったみたいなこともある。それでもなお医師や歯科医師は今一番効果の高い可能性のある治療を科学的根拠の中で模索しないといけないのだ。
これをただの自分の経験や、少ないN数で根拠のあるように話をしてはいけない。
個人的に納得したひとがコソコソするのはいいと思う。問題はあたかも正解かのように断言し、情報を広めることだ。
基本的に治療は確率であり、「確実に治る」とか耳障りのいい言葉は嘘と思ってもらっていい。
科学的根拠のない民間療法は基本的に情弱ビジネスだ。納得の上でやるのは構わない。
ただそれに基づく失敗を他人のせいにしてはいけない。それで命を落とすことになっても仕方のないことである。それは本人による愚行権の行使であり、自分のせいなのだ。