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子どもを小顔にしたいから歯を抜いてくれという親

はじめに

友人から「小顔にするのに奥歯抜くっていう方法があると聞いたんやけど本当?」という問い合わせがあった。僕は現在もっている知識から「それはない」とした。子どものうちに奥歯を抜くなど咬合高径の確保も難しくなるし、下顎は後転方向にいって気道狭窄にも繋がるのでは?と思った。

しかし、そんな方法があるのか?僕が知らないだけではないか?というのもあり、「調べるから少し待ってくれ」とし、調べてみた。

僕は自慢ではないがビッグフェイスで頭身バランスが悪いので、そんなことができるならしてみたいものだ。

実際調べてみた

ちゃんと調べたのだが、僕の感覚が正解で子どもの頃に抜歯したから小顔になるという論文やそれを主張する内容のものはなく、ほぼ全て成長期の子どもの奥歯は抜かない方がいいという回答だった。ただ、かなり特殊な条件をみたしたときだけ、第二大臼歯を抜くということがあってもいいというぐらいだった。

まずはどういったときに第二大臼歯は抜いていいのだろうか。

成長期に第二大臼歯を抜いていい場合

それは矯正の概念になる。まず、顎が小さく親知らずがあるが入り切らないことが予想される。親知らずのサイズが普通の第二大臼歯ぐらいある。年齢が10歳前後である。そのほかにも矯正的な検査やCTの撮影などを行ってということになるが、これらの条件を満たしたとき第二大臼歯を抜くことがある。それはどうしてかというと、第二大臼歯がなくなった位置に第三大臼歯(親知らず)がきれいに収まるからだ。これらが予想されるときは第二大臼歯を成長期に抜くという選択肢はある。

保存不可能な場合

これは抜きたくはないのだが、物理的に保存が難しい、痛みや腫れがひかずその原因である。その場合はほんとうに仕方なく抜くという感じだ。歯科医師も患者も誰も抜きたくないのだが、仕方なくということだ。

この二つ以外成長期に大臼歯を抜くということはありえないと思っていい。

なぜ成長期に大臼歯を抜いてはいけないか

はじめにに書いているとおり「子どものうちに奥歯を抜くなど咬合高径の確保も難しくなるし、下顎は後転方向にいって気道狭窄にも繋がるのでは?と思った。」としたが、まんまその通りだった。(根拠論文

根拠論文に示したデータはいまだに指示されているらしくて、僕の考えは正しかった。このときは正しくても今は否定されているということは多々あるので、常にデータは更新しなければならない。僕はここで支持されているデータとしてとりあげているが、その先に否定されることもある。

この論文では口呼吸スタートになっているのだが、臼歯部の咬合がなくなっても同じルートを辿ることになる。このなかで特に問題なのが下顎の後方回転に伴う気道狭窄だ。下顎が後ろに回転するので気道がおさえられて気道閉塞になるわけだが、それはつまり呼吸がしにくくなるということだ。

この呼吸状態が悪いと言われたら単純によくなさそうなことはわかっていただけるだろうか。

成長期であれば成長の妨げになるし、ストレスも溜まる。そして、呼吸不全というのはうつ病のリスク因子でもあるのだ。OSASという睡眠時無呼吸症候群という病気があるが、睡眠時の呼吸障害はうつ病のリスクが2−3倍になることがわかっている。

あなたは自分の子どものうつ病のリスクをあげたいか?ということだ。

これは子どもの頃に大臼歯部が崩壊している子どもにもおなじことが言える。子どもの大臼歯部の虫歯を治していないという親は自分の子どもがうつ病になるリスクをあげている行為にほかならない。

小顔にならない

そもそも子どものときに大臼歯を抜いたとて小顔にならない。歯が刺さっている部分の骨を歯槽骨というのですが、その部分は歯があるかないかで骨のできる量は決まる。しかし、それは歯が埋まっている骨の部分であって、フェイスラインではない。フェイスラインを決定しているのは下顎骨だ。下顎骨は遺伝の関係が強い。つまり、歯を抜こうがどうしようがでかくなるものはでかくなるし、小さいものは小さいということだ。

これは明確に関係ないとされている。強いていえば下顎が後ろに後方回転することで小顔に見えるかなぁぐらいだ。ただ、学術的な立場でいうとそれはバランスを崩しているだけといえる。きれいの定義をどうするのかということにもなるが、バランスが整っていることを美しいとするならば、醜くしているといっていいということになる。

健康被害

挙句気道狭窄からくる呼吸不全はうつ病のリスクになる。つまり精神的にも不健康になるのだ。見た目にも精神にもよくないならやるべきではない。僕はヒトの美しさの定義のなかに健康が入っていると思っている。僕からみれば子どもの大臼歯抜歯は心身ともに醜くしていると言っていい。

おわりに

以上のことから僕は余程のことでない限り子どもの大臼歯は抜かない。かなり特定の条件かだけだ。でも、あの芸能人もとか聞いたのだが、それは大人になってからだ。大人になってからならそれは自己責任でいいだろう。それでも僕はしたくないが、、、

その昔、佐竹雅昭という格闘家が上顎の前歯を抜いていたが、それは本人が大人で覚悟のあってのことなので、それはそれでいいと思う。しかし、親が子どもを「小顔にしたいから大臼歯を抜きたい」これだけは明確に間違いと言えるだろう。

これは僕に質問してきた親がおかしいわけではなく、AAO(米国矯正歯科学会)、AAPD(米国小児歯科学会)、 IADR / 顎顔面成長研究などが子どもの大臼歯の抜歯に声明を出している。つまりそういうことが行われていてよくないよと専門機関が声をあげているということだ。

みなさんも子どもの大臼歯は守っていきましょう。