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大学入試共通テストの日に雪が降りそう⛄️その対策

共通テストの日に雪予報

歯科医師が話することではないのかも知れないが、大事な試験の日に雪などの天候や災害などがあった場合どうすべきかという話をしていく。かくいう僕は歯科医師国家試験の日にとんでもないトラブルに巻き込まれたことがある。その時の経験を元にどういうことがあり、どういうことを考えなければならないか、どういう行動をとるべきかということを話していこうと思う。

歯科医師国家試験とは

歯科医師国家試験とは6年大学に通ってもろもろの試験をクリアして初めて受験が許される試験であり、これをクリアしないとそもそも歯科医師になることはできない。医師国家試験も同じなのだが、これらの専門的な教育を受けて、難しい試験をクリアして初めて医療というものができる。これらの厳しい関門を超えているからこそ「針で刺す」や、「メスで切る」などの傷害行為が特定の条件下で許されるのだ。大学に6年も通って自分の職業もほぼ決まっている中、潰しも効かないしこれから共通テストを受ける方には申し訳ないが、共通テストより重要度は遥に高い試験と言っていいと思う。しかも昔は合格率90%を超えるような試験だったが、僕の受けた年は全国の合格率が70%切った初めての年だった。これらの前提を踏まえて前日から当日に何があったのかを説明し、それに対してどうすべきだったかを書いていこうと思う。

国家試験前日

僕はずっと嫌な予感がしていた。僕の嫌な予感というのは往々にして当たるのだ。嫌な予感にはレベルがあり、最高レベルのものは人生でも数回しかないが避けようにも避けられないものだった。そしてこの時は最高レベルの嫌な予感がしていた。僕は当時京都に住んでおり、大阪会場で受験することになっていた。大阪会場は最寄りの駅から徒歩で15分ぐらい。その最寄りの駅から電車に乗り15分ぐらいのところの大きい駅(仮に〇〇駅とする)の周辺にみんなホテルをとっていた。

僕の感覚で言うとホテルから会場が遠すぎる印象があった。僕は嫌な予感がしていたので、なるべく会場に近いところにホテルをとることによって、危機回避を狙ったのだ。当時の大阪会場は山の麓にあり、僕は山の上にホテルを見つけていた。裏にゴルフ場がついているような豪勢なホテルだった。そこからタクシーで10分程度で会場にベタ付きできる悪くない立地だった。しかし、僕は一人なのだがツインしか部屋がない。しかし国家試験は2日ある。今日こっちのベットに寝て明日はあっちのベットに寝よう。人生のかかっている試験だそれぐらいは許されるだろう、そう思ってそのホテルを予約し、明日の試験の用意をした。ちなみに当時の国家試験は1日目の午前はA問題、午後はB問題、2日目の午前はC問題、午後はD問題という分類になっていた。前日はA問題とB問題の勉強をできる用意をし、明日の朝のタクシーの予約をし、天気予報を見て、明日は晴れ🌞完璧!問題ないはずだ。体調も万全💪やるべきことはやった、しかし嫌な予感は晴れることなく就寝する。

国家試験1日目

朝、目覚ましで起きる。時間も問題ない。着替えや用意なども完璧。タクシーも来ている。どこに問題があろうはずもなかった。嫌な予感は僕の杞憂に過ぎなかったのだろう。そう思ってタクシーに乗り会場に向かった。その時のタクシーの運転手との会話だ。

タクシーの運転手「ここのホテルって山の上でしょう。雪が降るとね、車がスベって登れなくなるんです。」

僕『これから試験やのにスベるとか言うなよ。ゲンが悪い。』

僕「まぁ天気予報も晴れだったんでね、大丈夫だと思いますけど。」

タクシーの運転手「そうですね。大丈夫だと思いますが、、、」

こんなフラグがあるだろうか。現実世界で流石にこれは回収されることはないだろう。ちなみに大阪市内では積もるような雪はほぼ降らない。この日に関して言うと10年以上積雪はない、そんな地域だ。

そして僕は問題なく試験会場に着き、自分の席につく。鉛筆や時計の用意も万全だ。全く問題ない、、、はずだった。そしてA問題の開始のベルがなる。そして僕は第一問が今までの傾向にないような問題が出たこと以上に外を見て真っ青になる。近年大阪では見たことのないレベルの大雪が降っているのだ。僕は人生のかかった試験を解いている最中に思うのだ。

『オレってホテル帰れるのか?』、『逆に帰ったとして次の日ホテルから出られなかったらどうなるんだ?』、『試験当日に熱が出たなんて不運は聞いたことあるけど、ホテル無くなったやつなんている?』、『そういえば父は国家試験当日に乗ったタクシーがパンクしたって言ってたっけ笑』みたいなことを考えていた。国家試験の日に父を超える不運に自分が見舞われるなんて夢にも思っていなかった。

当時はスマホなど存在せず、パカパカの携帯電話だったのだが試験の時間は電源を落としている。1日目の試験が終わってから携帯電話に電源を入れると留守番電話が1件入っていた。当然その留守番電話を聞く。

プルルプルルガチャ

ホテル「太田様、大変申し訳ないのですが、当ホテルに戻れなくなりました。つきましては近所にホテルを探したのですが、〇〇駅周辺のホテルはいっぱいでかなり遠くのホテルになってしまいます。どうなさいますか?折り返し電話をください。」

というものだった。実は大阪会場は中国地方や四国地方の学生も受けにくるので、みんなが泊まる〇〇駅のホテルは予約でいっぱいだったのだ。そしてホテルに電話をする。

プルルプルルガチャ

僕「はい、太田です。電話をしろと言われたので電話しました。」

ホテル「太田様、大変申し訳ないのですが、当ホテルに戻れなくなりました。つきましてはホテルを探したのですが、△△駅あたりまでホテルがありません。どうなさいますか?」

僕「そもそも〇〇駅でも遠いと思ったからそちらのホテルに泊まったんだ。△△駅なんか遠過ぎる!」

ホテル「こちらとしましても明日の披露宴がキャンセルになっている状態でして、、、」

僕「知らん!ホテルは自分で探す!」

ガチャ

ということで、僕は国家試験1日目に自分の泊まるホテルを失った。とりあえず大きい駅の〇〇駅まで行くかと〇〇駅まで行った。

ホテル探し

〇〇駅に到着した。僕は勉強道具や筆記用具の入った鞄を持ちながら雪の降るなか街を探索した。ホテルを手当たり次第探したのだ。当然雪が降っている。傘もないので雪に降られながらホテルを当たる。「空いていますか?」、「空いていません」。「空いていますか?」、「昨日と今日は満室なんです。」みんな泊まりで試験を受けているのだ。当然といえば当然。大きいグループでホテルのほとんどの部屋を押さえているところもあるし、何人かのグループでまとまっているひともいる。誰かにお願いすれば部屋に入れてくれる人もいたかもしれないが、みんなも人生が掛かっている中、他のひとに迷惑をかけたくないという気持ちと、その助けてくれたひとが万が一にでも国家試験を落ちた時に「お前を泊めたせいだ。」とは冗談でも言われたくないと思っていた。我々はみんな同じ業界の人間になるので、一生そういうことが言われるのだ。

僕は頭に雪を積もらせながら5件は断られただろうか?『最悪漫画喫茶に泊まることも考えないとな』そう思っていた時に、目の前に小さくて小汚いホテルが目に入る。もしやここには誰も泊まっていないのでは?と思い受付に行ってみると空いているという。即座そのホテルをとり僕はやっと暖房の効いた部屋に入ることができた。

ホテルに入ってホッと一息つく。みんなは明日の勉強をしているだろうか。僕は明日の勉強道具が山の上のホテルにあるので勉強道具がない。着替えもなければ替えの靴下もない。当時でもほぼ見たことがないような100円を入れたら映るテレビだ。見ることもない。明日の用意もクソもない。同じ服を着て、同じ鞄を持っていくだけだ。とりあえず、シャワーを浴びて寝て国家試験1日目が終わった。

国家試験2日目

2日目の朝になった。雪で電車がなどが遅れたり止まったりしている可能性があったのでかなり早くホテルを出た。若干の遅れはあったものの問題はない。時間通りに試験会場に着いた。自分の席について周りを見渡すとみんなギリギリまで勉強をしている。しかし、僕はC問題とD問題の勉強道具を持ち合わせていない。ただ、筆記用具を並べ、そして黙って座って待っているだけだ。

正直この段階で国家試験は落ちたと思っていた。当日に熱を出すなどいう不運は聞いたことがあったが、ホテルがなくなったやつなど聞いたこともない。そんな不運なヤツが厳しい国家試験に受かるはずがない、そう思っていたのだ。しかし、僕が偉かったのは国家試験はマークシートなので何万分の1でも何億分の1だとしてもマークをしている以上受かる可能性が0ではないと思っていたのだ。『落ちているとは思うが、最後までマークをしよう』そんな気持ちで国家試験の2日目に向かっていた。

C問題、D問題ともにマークだけは埋めた。そして帰りにホテルに電話をする。

僕「鞄の中を開けてもいいのであるもの全部鞄に詰めて送ってくれ。もうそちらのホテルに行きたくない。」

そして、家路に着いた。

その後

家に帰って何日か経った頃ホテルから荷物が届いた。着払いで1日分の宿泊費の請求書もついて。この時は落ちてたらこのホテル訴えてやりたいとさえ思っていた。着払い?請求書?とさえ思っていた。

僕は周りに自分の話をした。何も話をしなかったらただ辛いだけの経験だが、話をしてみんなが笑ってくれたらそれは話のネタなのだ。中には「言ったらホテルの部屋に入れてあげたのに。」とかいいやつもいたが、当時自分も周りも思っていた。『こいつは国家試験に落ちている。』と。

そんな中こんなひともいた。仮にA君としようか。当然A君も僕がホテルをなくしたことを知っている。

A「国家試験の採点した?」

僕「いや、していない。多分落ちてると思うから結果を見てからそこから勉強しようと思って。それまでは思いっきり遊ぶわ。」

A「採点せぇへんやつ落ちるらしいで。」

僕『はぁ?採点してないって言ってるヤツにいうことか?大体オレがホテルなくなったんも知ってるやろ?理想はオレが国試受かってA君が落ちるのが理想やけど、流石にそれはないか。せめてオレと一緒に落ちたらいいのに。』

「まぁ落ちてそうやし、結果見てから頑張るわ。」

A「そうなん。オレは自己採点では多分合格してる。」

僕「あ、そう。」

こんなやりとりがあったのを覚えている。A君は成績が良く僕は成績が悪かった。当時の国家試験には地雷問題というものがあり、他がどんなに良くてもその問題を間違えると落ちるというものがあった。しかし、それで落ちるひとはほぼいないし、優秀なA君がわざわざその問題を間違えるとは考え難い。

その後何年かは「国家試験の日にホテルがなくなったやつがいる」という伝説になった。それを知らない後輩が「先輩の代で国家試験にホテルなくなった人がいるらしいんですけど、知ってます?」と聞いてきたひとがいた。「あぁ、知ってるよ。」とかとぼけていたら「誰ですか?誰ですか?」と聞いてくるので自分だと言ったら呼吸困難になる程笑っていた。それほどあり得ないことが起きていたのだ。

よく考えてほしい。この当時11年振りに大阪で積雪したという大雪が国家試験の前日に降ればそもそもホテルに行くこともなかったので、家から試験会場に通っていたし、国家試験の2日目に降っていれば、荷物も何かも持っているので問題なかったのだ。国家試験1日目に雪が降ったからこそ起きた事件だったのだ。

結果

どうなったのかというと僕はその年の国家試験に合格した。

みんなは何人かで結果発表を見に行ったりしていたようだが、僕は落ちていると思っていたので、結果発表は一人で漫画喫茶で見ていた。結果発表の時間には日本中からアクセスがあるのでなかなか結果発表のページを開くことはできない。そしてインターネットのページを開けたのは結果発表の時間から2、30分は経っていただろうか。自分の番号を探すとあったのだ。本当に良かった。

そして、A君はどうなったのかというと落ちていた。後で聞いた話によると家族にも自己採点で多分受かっていると言っていたようで、家で結果発表をみたそうだ。

A親「どう?受かってた?」

A「番号がないねん。」

A親「もういいって。そんなボケ!」

A「いや、ホンマにないねん。」

みたいな会話をして家族全員リビングで3時間無言だったと言っていた。

奇しくも僕が受かってA君が落ちたらいいと夢見ていたことが現実になる。ちなみにA君はもともと優秀なので次の年にはちゃんと合格している。

A君と僕は名前が近く、同じ大学のひとは大体の場所しかわからないのだが、A君の番号がなく、僕の番号があったことによってこのあたりで番号がないのは太田だろうということでみんな僕には連絡してこなかった。僕も自分から家族以外に連絡はしていなかったので、僕が合格していたことが周りに知れるのはしばらく経ってからになった。

大事な試験での天変地異対策

正直天変地異に対策などない。天変地異を防ぐことはできないのだ。1月1日に被災した人も本当に大変なことだと思う。

そこで大事なことは「みんなと同じ行動をとる」ことだ。みんなと同じ行動をとって多数に被害があれば救済措置がとられる。僕の場合はみんなと違うホテルをとることによって一人だけ被害にあった。この場合は救済措置は取られない。

例えば、人身事故で電車が大きく遅れて多くの受験生が時間通りに会場に辿りつくことができない。これなら主催者は救済措置をとる。しかし、誰か一人が会場に向かっている途中に事故に遭って少し遅れる。この場合はおそらく救済措置は取られない。

最悪の状況ではあったが、僕は一ついい行動をしていた。それは「諦めなかった」ことだ。おそらく落ちていると思っていたが、最後までマークはした。みんなもそうすべきだと思う。時間が足りなくてマークすらしていなかったら0点だが、マークさえしていればいくらか点数がある可能性がある。

共通テストを始めこれから国家試験のシーズンになっていく。皆さんも諦めずに最後まで戦っていただきたいと僕は思う。