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医療費の増大は医療側の問題ではない

はじめに

予算が出されてくると国家予算における医療費の増大が問題になる。確かに昨年と比べて1兆円という単位で上がることもある。実は歯科に関してはほぼ横ばいで30年ぐらいきていて医療費の増大には寄与していない。

しかし、社会保険料は上がりみなさんが苦しむ一因にもなっている。

いくら海外諸国と比べると医療費が安いと言っても社会保険料の割合は高く感じてしまう。社会保険料を払いたくないけど、医療は受けませんという選択があってもいいのでは?と最近思う。

その医療費の増大の要因について少し書いていきたい。

医療費の増大は医師が儲けるために過剰医療をしている⁉️

これは明確にNOと言っていい。中には多く薬を出すひとがいるかもしれないが、日本で多く出されている薬で儲けはかなり少ない。実際安すぎて海外に親会社がある薬を作っている会社は安い薬を作らなくなっていっている。同じ材料で海外で売ればもっと利益があるのだから当然と言えるだろう。

昨今問題となっているのが寝たきりの高齢患者の問題だ。これを「医師が儲けるために生かしている」と思っているひとがいる。しかし、これは医師が「(金銭的にではなく)自分の身を守るため」に行なっていることが多い。

では、誰が悪いのか?

司法

これは司法といっていいと思う。寝たきりの自分の意志が示すことのできない患者がいたとする。自分で食事もできず起き上がることもできないとする。家族から「診てくれ」と言われたら診ないといけないし、医師側が「快方する見込みがないのでこれ以上は止めましょう」と言ったり判断したりしても患者家族がそれを拒否し、「できるだけのことをしてくれ」と言われればやらないといけないのだ。

これで勝手に病院判断で食事や点滴をやめて、訴えられたら病院側が負けるし、転倒や誤嚥などがあっても訴えられたら病院側が負けることがあるのだ。

例えば90歳を超えて病院に入院しているとする。自分の口で食事を摂りにくくなっている。歩くこともままならない。家族は家庭での介護が難しく病院で入院することとなった。

この患者さんの転倒や誤嚥はもはや寿命だと僕は思うが、それがあると病院側が責任問題を問われるのだ。

気持ちはわからなくはないが、仕方ないという部分があるとも思うのだ。しかし、これを裁判にかけた場合、患者家族側が勝つことが多い(100%ではないが)。

では、翻って病院側の目線に立ってほしい。同じ患者さんが入院してきた。食事形態をそのひとの摂れるレベルに合わせた方がいい。しかし、それには介助が必要で非常に時間がかかる。看護師は他の業務を多く抱えているので食事の介助に時間はかけられない。歩くこともままならないが、少しでもリハビリなり身体を動かした方が、そのひとのためにはいいだろう。しかし、ベットで寝ているのに比べて転倒のリスクがめちゃくちゃ上がる。

では、あなたは効率も下がる、事故の確率が上がる食事の介助をしっかりしてリハビリをしますか?ということになる。効率が下がらないぐらいひとを多く配置すればいいと思うかもしれないが保険点数は一定なので、入れれば入れるだけ赤字になるし、昨今は90%の別途が埋まっていても病院経営は赤字になると言われている。ギリギリの状態でもそうなのだ。ひとを増やすのは難しいだろう。

患者家族のモラル

患者家族側にも問題がある。家で看れないから病院や施設にお願いするわけだが、ある程度高齢のひとに関しては寿命というものを感じなければならない。事故も踏まえて寿命なのだ。

もちろん、不注意の事故があってはならない。明らかにおかしい場合は訴えることもあるだろう。しかし、真面目にやっていて訴えられたらそれは病院や施設側はやってられない。リスクと給料が見合ってなさ過ぎる。

場合によっては患者側が負けることもあるのだが、そうなると本当に誰も幸せにならない。唯一どのパターンでも幸せになっているのは弁護士だけなのだ。

そもそも患者側が仕方がないとするのも大事なのだが、寿命というものをもっと考慮しない司法が一番問題あると言っていいだろう。

医療費の増大を防ぐのは患者側

医療というものは本人ないし、本人の意思表示ができない場合はその家族の決定が必要となる。ここでは話が面倒になるので、患者本人とするが、本人が拒否すれば医療は行うことができない。過剰な医療が問題なのは患者側からの依頼があるからなのだ。

つまり、決めないといけないのはそれぞれの家族内での治療を打ち切るラインなのだ。

それで「もう結構です」となれば、かなり医療費は圧縮できるようになる。実際昨今では胃ろうなども回復の見込みがない場合はしてはいけなくなってきている。寝たきり老人への胃ろうや点滴は虐待という扱いの国もある。

治療を止めるのは医療側ではなく患者側の問題なのだ。

医療費の増大を止めるには

とはいえ、医療側も案を考えるべきだと思う。僕が考えているのは保険医療はもっと最低限でいいということだ。歯科でいうなら補綴(歯のないところに歯を入れること)は義歯のみでいいと思うし、虫歯の処置や歯周病の処置だけでいいと思う。それ以上の治療を望むなら自費でというぐらいでどうだろうか。

医科においても、寝たきりの老人に関する医療はどこかでラインを決めないといけないかもしれない。それ以上を望む場合は自費となってくる。

実際、人件費などは上がってきているので今の医療費で賄えないのは確かだ。病院はドンドン潰れていっているし、保険点数あげてくれと医師会や歯科医師会が言っても「だったら保険診療やめたら?こっちは頼んでいない。」というのが厚生労働省や財務省の言い分だ。

近い将来保険診療は潰れると僕は思う。

おわりに

医療費の増大が医療側の問題ではないというのはわかっていただけただろうか?それぞれのひとの問題なのだ。とはいえ、給料から引かれる社会保険料が高いのも事実だ。これらをクリアにするのは社会保険料を払わない代わりに医療を自費でしか受けないという枠を作ることだと思う。ただ、そのひとはどんなに痛い目にあっても酷い目にあってもお金がないなら医療を受けてはいけない。急な事故ですらダメだ。

社会保険がなくなると保険会社が入ってくる。外資系の保険会社などアメリカで実績があればお手のものだ。おそらく今の社会保険料より高い額が取られる。

そしてアメリカは医療費が高いことで有名だが、個人の破産理由の一位は医療費の支払いだ。

結局どの選択が誰の特になるのかは僕もわからない。