ブログ
マウスガード(スポーツマウスピース)の選び方
はじめに
マウスガードを皆さんはご存じだろうか?ボクシングや格闘技の試合で選手がしていることが有名かもしれない。格闘技をはじめとするコンタクト競技では義務付けされていることが多い。最近ではノンコンタクトスポーツでもつけてもいいというのが認められていたりする。それではどのような種類があるか説明していこう。
マウスガードの種類
市販品のマウスガード
市販のマウスガードは安いものであれば1000円程度で買うことができる。お湯で軟化し、自分でギュッと吸って適合させたりする。当然自分でしているので適合は甘く外れやすい。僕自身空手をしていたので試合中にマウスガードが飛んでいるのを何度も見たことがある。試合中に飛ぶマウスガードは基本的にこの市販のものだ。
僕は大学生の頃の空手をしていたので、試合にも行っていたのだが、選手同士がぶつかって二人ともマウスガードが飛び、片方の選手がマウスガードを拾ったところ自分のではなかったらしく相手に渡そうとしたら相手は自分のと思ってマウスガードを口に入れた後で、相手は一度口に入れたマウスガードを相手に渡すという悲惨な状況が生まれていた。
他人が口に入れたマウスガードを必死に道着で拭っていたのを覚えている。試合中なので水洗いもできなかったのだ。
試合中にマウスガードが飛ぶということはあってはならない。
歯科医院で作製されたマウスガード
歯科医院で作製する場合、医院にもよるが一般的にはおよそ5000円ぐらいの値段になると思う。これは歯型をとり、歯科技工士という専門職のひとに作製してもらい、チェアーサイドでドクターが調整したりする。僕の場合は少しこだわりがあるので自分で作製したりもするが基本的にはその流れが多いだろう。
特に競技特性というものがしっかりわかっている歯科医師のいる医院で作製してもらうのがいいだろう。競技やルール、年代によって色が決められていたり、用途が違ったりするのだ。ひと昔前はラクロスで男女での差があったことさえあった。場合によっては自分からこういう色がいいとかルール上こうなっているという話をしてもいいだろう。全ての競技の知識を歯科医師が持っている訳ではない。
例えば同じ競技だとしてもアメフトの場合ではポジションによってマウスガードの求められる仕事が違ったりもする。コンタクト競技であれば繰り返しぶつかることもあるだろうし、ノンコンタクト競技の場合は単発で大きいあたりがあるだけかもしれないのだ。それによって求められるマウスガードの厚さや硬さは変わってくるのだ。
そして、昨今研究が進んでマウスガードの材質は少し硬いものになっている。マウスガードの目的に脳震盪や歯の破損のリスクの軽減などがあるが、この歯の破損に関わるところで少し硬いものの方がいいという研究結果が出ている。
特にノンコンタクトのスポーツの場合はかなりカチカチに近いものが使われる場合すらある。アマチュアアスリートならば材質や硬さをそこまでこだわることはないかもしれないが、トップアスリートであればそこまでこだわり、それが心の支えになることすらあるのだ。
トップアスリートのマウスガード
サッカー日本代表の遠藤航選手をご存知だろうか?彼はマウスガードにこだわりのあることで有名な選手で、大きい相手にもヒットしにいく選手なのでかつて歯を破損したことがあるようだ。浦和レッズからシント=トロイデンを経てVfBシュトゥットガルトでプレーをし、結果を出して今はリヴァプールFCでプレーをしている選手だ。このシュトゥットガルトにいたときにドイツの大きい選手にあたりに行くので肘や拳が顔にあたり歯を破損するという事例が多いらしい。そこでシュトゥットガルトで日本人でありながら歯科医師をしている宮川先生のところにいったそうだ。
宮川先生はサッカーという競技をほぼ知らないらしく、遠藤選手と話をしながら材質から研究をしたそうで、結果今までの常識では考えられないぐらいカチカチの材質でマウスガードを作製している。
これは全てのマウスガードの材質をカチカチにした方がいいというものではない。ノンコンタクトの競技のごく限られた場合にのみ適応される症例だ。稀にしか大きい接触がなく、歯を守ることに特化した場合だ。マウスガードの材質はカチカチなのだが歯が割れるぐらいの強い衝撃があった場合、割れる程度の強度になっている。マウスガードが割れることによって衝撃を逃すのだ。バイクのヘルメットと同じ原理と思ってもらったらいい。例えばこれを頻繁に当たることが多い打撃系の格闘技に応用すると口の中がぐちゃぐちゃになってしまう。
僕もトップアスリート向けのマウスガードも作製するのだが、料金としては220,000円(税込)をいただいている。最初に競技特性や自分のポジションや役割についての聞き取りが必要なことと、プレイ中の姿勢の分析などに時間がかかるのだ。そして、一度競技で使ってからフィードバックをしてほしいのだ。そしてそのフィードバックをふまえて作り直しを二度する予定でいる。一度厚さや材質、咬み合わせの位置などが決まってしまえば、同じものを作製するのには55,000円(税込)で作製する。もちろんアマチュア向けのマウスガードは一般的な5000円程度で作製している。
ちなみに遠藤選手はマウスガードに小型の外国産の車が買えるぐらいの値段を使っていると言われている。実際はこの話には裏があってそこまでではないらしいのだが、、、
ただ、遠藤選手のマウスガードはヒビなどが入ると強度が変わってしまうので、毎試合作製されている。その都度フィードバックがあり、宮川先生は絶対にNOとは言わないそうだ。全て受け入れて要望に応えているという。
全てのトップアスリートがそういう訳ではなく、例えば同じサッカー日本代表の三苫薫選手の場合、スピードで相手を圧倒して相手選手が触れることも許さないのでそんなにしっかりしたマウスガードは必要ない。呼吸がしやすいや違和感が少ないことの方が優先されるだろう。それに毎試合作り直す必要もない。作製する歯科医師の立場としてはフィードバックは欲しいところだ。
おわりに
僕自身空手をしていたことからマウスガードの使い心地にはこだわりがある。フィット感であったり、舌感であったり、呼吸しやすさであったり。今もたまに空手やスパーリング会に行って身体を動かしつつ、自分作製したマウスガードの使い心地などを確かめている。
アマチュアであればそこまでこだわることもないのかもしれないが、少しこだわってみたい方は僕の体験型の講義を聞きつつ、マウスガードを作製してみてはいかがだろうか?