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パリパラリンピック車いすラグビー日本代表金メダル🥇

はじめに

パリオリンピックが始まった段階でのオススメ競技に出していた車いすラグビーが金メダル🥇を取りました❗️

応援していたので嬉しいです❗️

予選リーグは抜けれるんですが、決勝トーナメント(4チーム参加)に入ると負けてしまって3位という結果が多かった。準決勝の壁を越えられるかというのがポイントだったのだが、そのあたりを踏まえて書いていきたい。

車いすラグビーという競技

この競技は障がいの程度、男女性別関係なくできる競技になっている。障がいの重さで0.5-3.5点まで7段階に選手の点数が振り分けられていて、競技に出ていい(コートに入れるのは4人)のは合計8点までとなっている。つまり、障がいの程度の低い3.5点や3.0点の選手ばかり出すことはできない。

そして、車いすラグビーは車いす競技で唯一だと思うのだが、ガチガチに車いす同士をぶつけていい、タックルありきの競技になっている。

ここで、疑問が湧くだろう。そんな競技なら女性が不利ではないか?普通に考えればそうなのだが、コート内に女性がいると合計8点までだったコート内の選手の合計点数が8.5点になるのだ。

そして、障がいの程度で点数が振られる(おおよそ3.0以上ならハイポインター、1.0以下ならローポインターと言われる)のだが、例えばハイポインターの選手とローポインターの選手ではかなり差がある。おそらくスプリント競技であればローポインターのひとに勝ち目はないと言っていい。

では、ローポインターの活躍場所はどこかというと妨害だ。

ハイポインターの人が動きにくいように絡みつくのだ。仮にローポインターのひとがハイポインターの動きを止めたら残っている選手の点数は自軍の方が有利ということになる。

車いすラグビーは普通のラグビーと違って1点ずつを取り合う競技だ。行ったり来たりしているだけでは差がつかない。つまり、途中でターンオーバーやミスが起きた時に差がつく。ローポインターはそのミスを誘うのだ。

日本には倉橋選手というローポインターの女性の選手が活躍している(このひとの重要性は後述する)。逆にオーストラリアやアメリカには割と点数の高い女性の選手でバリバリポイントをとる選手もいる。

決勝トーナメント準決勝

オーストラリア戦

オーストラリアは世界ランク1位(日本は3位)の文句ない強敵。予選リーグでは違うリーグで、日本は3戦全勝の予選リーグ1位、オーストラリアは違う予選リーグの2位で準決勝の相手となりました。

日本はこの準決勝が壁と言われていて、決勝トーナメントで勝てていたなかった。そこでこの強敵である。

世界ナンバーワンプレイヤーと言われているライリー・バット選手率いるオーストラリア。前半は日本もオーストラリアもほぼミスなくプレイをしていた。

ここで、ルールの確認なのだが、車いすラグビーは1点を取り合う競技だ。どこかで連続得点を取らないと差がつかない。お互いミスはないが連続得点になるケースがある。それはピリオド間際とピリオドの最初だ。最初にボールを上に上げて取れた方のボールでスタートするのだが、仮にAチームが最初にボールをとったら第2ピリオドの最初はBチームからのスタートになる。つまり、Bチームが第1ピリオドの最終得点を取れば、第2ピリオドが自軍ボールで始まるので連続得点を取ったことと同じになる。だからピリオド内での最終得点というのは意味が大きい。

この時間管理がオーストラリアはうまいのだ。ミスをしないし時間管理がうまい。このチームをいかに切り崩すことができるのか?がこの試合の課題だっただろう。ライリー・バット選手を止めなければ勝利はない。

前半の第2ピリオドまで両チーム大きなミスもなく進んだ。しかし、第3ピリオドの終わり、35-36オーストラリア優勢の場面。第4ピリオドは日本チームボールなのでここで同点になれば優位に最終ピリオドを進めるという状態だった。タイムアウトを使って時間管理をしていくのだが、1試合に4回まで選手はタイムアウトを取れる。オーストラリアは使っていたのだが、日本はここまで温存してこれた。これを潤沢に使って優位に進めたい場面、タイムアウトを3回使って第3ピリオドの最終ポイントを取れなかったのだ。

これはかなり流れが悪い。タイミング的にも正直負けまで見えるような失敗だった。

その流れが悪い状態で迎えた最終ピリオド。少しオーストラリアが乱れたところをしっかり日本がとり、ラスト3分でなんとか同点になる。しかし、順当に行けば1点ずつ取り合う競技なので、このまま行けばオーストラリアに1点差で負けてしまう。しかし、ラスト43秒でキャプテンの池選手のプレーで同点に持ち込み、なんと3分間の延長戦へ。

この段階では勝ったなと思いました。明かに流れが悪い中、それを跳ね返しての延長戦だったからだ。

ただ、それは逆も然り、油断なく攻めたいところだ。

延長戦入ってすぐにライリー・バット選手はパスミスをする。世界一の選手と名高いライリー・バット選手だが、手に障がいがあるため精密なパスが苦手なのだ。そこを狙っていた。ローポインターの乗松選手や倉橋選手が絡みついたおかげで起きたミスだった。それもこのタイミングだけではない。試合を通じて削り続けた結果、体力が落ちたところに起きたミスだと僕は思う。

ここをしっかり回収し、2点差になり、ほぼ勝負あり。そのまま日本は逃げ切って勝利となった。

決勝トーナメント決勝

アメリカ戦

この試合では最初日本にミスが続いた。なんと第1ピリオドが終わった段階で11-14で日本が負けていた。いくら第1ピリオドといえど、この競技で3点差はいただけない。これは流石に厳しいか?という立ち上がりだった。

アメリカのチャック・アオキ選手(日系?)が躍動していた。車いすラグビーはボールを運ぶ競技になるのだが、自分のももの上にボールを置いている形で運ぶ。そこに抱えてたら取られんだろうと思うのだが、そこは車いすなので移動するために車輪を手で回さなければならない。その時にボールはももの上でフリーになるのだ。そこを手を伸ばしてスチールしてくるのだ。日本の選手はあまりこのプレーをしない。というのも腕などに触れたら反則になり、相手ボールになるからだ。この1点を取り合う競技でこの反則は致命傷になりかねない。しかし、この試合ではチャック・アオキ選手は積極的にこのプレーをし、それが刺さりまくって第1ピリオドで3点差になってしまった。

しかし、それ以降は日本ペースで進み、第4ピリオドの時にはほぼ日本の勝ちが決まっているような状態だった。もちろん油断はならないが、競技上あまり逆転ホームランみたいなことはない。

最終的には48-41で日本が勝利し、悲願の金メダル🥇となった。

みんな抱き合い涙している選手も多くいた。その中で僕が注目したのはチャック・アオキ選手だ。本当に悔しそうにしていたし、如何ともし難い哀愁のある表情をするのだ。それぞれの選手の苦労が伺える。このレベルの選手で努力していない選手などいないのだ。その中で結果が出る選手出ない選手がいる。しかもオリンピックとなると4年に一度のオリンピックでは次のリベンジのチャンスは4年後になる。この4年は長い。だからこその感動や悔恨だと思う。

単純に4年という時間は長いとみなさん思うだろう。しかし、パラリンピックの選手にとってはもっと長い時間なのだ。障がいの種類によっては進行があり、次のパラリンピックにそもそもチャレンジできるかどうかもわからないのだ。その中での「今ここ!」だからこそ重いのだ。

金メダル🥇のポイント

イケイケコンビだけじゃない

キャプテン池選手と池崎選手のイケイケコンビが車いすラグビーの日本代表の顔と言っていい存在だった。ただ二人とも40代半ばいつまでも頼っていていい存在ではない。若い選手の台頭が必要だった。そこで急成長したのが橋本選手だった。年齢は22歳。イケイケコンビの半分の年齢だ。今大会大いに躍動した。東京パラリンピックでは出場機会も少なく悔し涙を飲んだそうだ。そこから一念発起し、主力選手にまで至った。

橋本選手が台頭することにより、池選手や池崎選手が出突っ張りである必要がなくなり、負担が減ったのだ。その結果、パフォーマンスが上がり、それをハイクオリティなプレイが長時間維持できるようになったのは勝因の一つだろう。

ローポインターの活躍

やはり試合がいい流れになっている時はローポインターの選手がよく機能している時だった。当然ハイポインターを軽視するわけではない。ハイポインターはガチガチに車いすをぶつけられている中ミスの許されないプレイを延々と行わなければならない。それを可能にするためにローポインターの活躍がいるといった状況だ。

乗松選手は1.5のプレイヤーだったと思うが、その中では動ける方らしく、ローポインターでありながらかなり得点に絡んでいた。

そして、僕が特に注目している選手は倉橋香衣選手だ。日本代表唯一の女性選手であり、彼女は障がいが特に重い0.5点の選手だ。このルールの中では彼女以外の3人で8点使えるという存在だけでかなり大きい選手だ。

テレビで見ているだけで直接は知らないのでわからないのだが、笑顔が可愛い雰囲気の温かい感じの女性だ。そんな女性がなぜこの荒れ狂う競技を選んだのか疑問だが、彼女の存在は日本代表チームを支えていると言っていいだろう。

橋本選手がコメントで「最初めちゃくちゃ緊張してガチガチになっていたが、倉橋選手がいつもどおりニコニコしているのを見て緊張がほぐれた」と言っている。橋本選手の躍動にも一役買っているという本当に存在しているだけでチームを支えている。

試合全体を見ていても、日本チームの流れが悪い時は倉橋選手が機能できていない時で、日本チームの流れがいい時は倉橋選手がよく機能している時だったことが多かった。出身は関西のひとらしいのでいつかお会いしたいと思っている。

おわりに

僕は車いすラグビーほどバリアフリーな競技はないと考えている。障がいの程度、性別、関係なく楽しむことができる。倉橋選手があるインタビューで応えているのだが、「ぶつかってもいい。転けてもいい。それが特徴のスポーツ。」と言っている。普通は転ばないようにするということに意識がいきがちだが、ひとは転ぶのだ。それが人生なのか、肉体的なことなのか。転ばないひとなんていないのだ。

ラグビー日本代表の方でも世代交代が進んできている。車いすラグビーの方でもイケイケコンビがいつまでも活躍できるとは限らない。橋本選手のような若い選手の台頭にも期待したい。